旧来より、偽造紙幣を行使しようとする者は実に様々な方法を考えるものである。ラージマネーは一般流通金種より超高額金種の紙幣で、今日のような電信送金による為替手段が存在しない時代、主に高額取引になりがちな金融機関間の決済用紙幣として活用されたと言われている。ラージマネー偽造券についてはその頻度は少ないものの、珍しさと骨董品的価値観(売買相場観)もあるためか、被害事例は今も後をたたない。例えば額面1000ドルのラージマネー(偽造券)を700ドル(もちろん現行紙幣で100ドル7枚など)と交換を持ちかける、といった具合である。だまされる側の心理としては連銀(連邦準備銀行)など正規発券銀行に持ち込めば現行紙幣との両替が可能という安心感?や兌換紙幣においては金貨に変えることができるという常識?的な解釈、さらには骨董品的な価値判断も手伝って、ついついだまされて購入するものと考えられる。
古来においては紙幣の改訂時期には新旧両紙幣の偽造券が現れることが多い。すなわち印刷メディアの発達も十分ではなく、ましてやTVなどの電波メディアがない当時では、多くの人が新紙幣発行のニュースを伝聞により知り得るだけで、画像情報については言わば無知に近い状態である。偽造団はつけいるすきとして悪用し『これが新紙幣だ』と言って、新紙幣を装った偽造券を行使するのである。改訂新紙幣は首都から徐々に地方に行き渡っていくため、特に地方での行使が目立つわけである。一方、何年か経て旧券の流通が途絶えた頃、今度はそのなつかしさを利用し、旧紙幣の偽造券が出回る、といった具合で紙幣の改訂時期が偽造団の稼ぎ時となっていた次第である。
ラージマネーのような偽造行使は、むしろ両替詐欺事件と言えなくもない。外貨両替の窓口に従事する担当者としては、いまだにこのような偽造事例が存在することを認識していることは安全対策上、重要である。昨今外国通貨に関しては、このような、いわば知能犯と言える事例が増えているのである。ちなみに写真の下段にはこれらの紙幣の現在取引相場価格を記している。
本書ではラージマネーの偽造券そのものを解説することではなく、ラージマネーの発行が終わってから70年以上経た今日、そもそも真正ラージマネーとはどのようなデザインであったのか、それを知っていただくための解説となっている。さらにラージマネーには銀兌換券(SILVER
CERTlFlCATES)、利付法貨紙幣(INTEREST BERNING NOTES)など様々な種類の紙幣が多岐にわたり発行されているが、本書で紹介するのはそのごく一部次第であることは言うまでもない。また、写真はモノクロを使用しているが、実際には財務省印などは青または赤などのカラーインクで印刷されている。
本書の作成についてラージマネーの現物を収集することは困難であったため、掲載画像については小池ザビエル氏著・蔵 アメリカ合衆国大型紙幣写真集large
size paper money of the united statesを参照させていただいた。同氏にはこの場をかりて、お礼を申し上げる次第である。
平成16年 1月24日
偽造通貨対策研究所
所長 遠藤智彦 |